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閉じこもりがちな冬の季節にこんな長編小説はいかがでしょうか。『沈まぬ太陽』は、1985年、8月に日本の航空会社が実際に起こした事故を軸に、大企業の古い体質を描いた三部五巻の大作です。作者山崎氏が、事実を丹念に取材して小説的に再構築されたこの作品は、映画化もされています。この本に描かれているような経済が繁栄していくにしたがって、人の良心が失われていくような人間の闇の部分が、現代社会にもあるような気がして身震いがしました。
14歳の男子中学生が自分の学校の屋上から転落死する事件が起こったことから、学校の保身的な体質やマスメディアの横暴な立ち振る舞い、その中で揺れ動く中学生の心理が描かれている『ソロモンの偽証』。学校内で行わることになった陪審員裁判を通して、青年期特有の学校内にはびこる悪意が暴かれていきます。14歳の少年は、自ら死を選んだのか?それとも、同級生の手によって突き落とされたのか?そして、それはすべて真実なのか。
『永遠の仔』は、瀬戸内海を望む位置に建つ小児専門病院の児童精神科病棟、通称「動物園」と呼ばれる病棟で知り合ったモウル・ジラフ・ルフィンとあだ名された3人の現在と過去を行き来しながら話が進んでいきます。それぞれに、人に言えない壮絶な幼少期を過ごしてきた彼らが辿り着いた現在とは・・・何処かで何かが違っていたなら、誰かは救われていたのだろうか?と思ってしまう驚愕な結末でした。紹介した三冊とも映像化されているので、ドラマや映画を見てから本に挑戦してみるのもいいかもしれませんね。 MCL編集部(由)
三冊堂639(2023/12/21)