2024年 (令和6年)
11月22日(金)
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 人の縁が次々とつながった、類稀なる世界に2つとない幕別町の宝物、「北の本箱」がスタートしたのは平成9年11月。
 24日にご逝去した社会派ミステリーで知られる作家・森村誠一さんは、幕別町の町友で、「北の本箱」に本を寄贈してくださるお一人でした。森村さんがこれまでに寄贈してくださった7,200冊の本の中から、この三冊をお届けします。 
 硬派な作品が多い森村さんは、猫好きとしても知られています。『猫の話』は、17人の名文家による猫にまつわるエッセイ集。写真家の藤原新也が野良猫に餌をやった経験は、たった一回だけ。池波正太郎は、自分の家に猫がいないことは考えられないと語ります。登場するさまざまな猫に、森村さんはどんな思いを馳せていたのでしょうか。

 森村さんは、写真と俳句、川柳など五七五の十七音から成る日本語の定型詩を組み合わせた新しい表現方法、「写真俳句」の提唱者でもありました。『優雅な生活が最高の復讐である』は、画家ジェラルドとセーラのマーフィ夫妻の華やかな交友関係がエピソードと写真で綴られています。マーフィ夫妻は、スコット・フィッツジェラルドが著作『夜はやさし』で、ダイヴァーバー夫妻のモデルとした人物。“暮らしの芸術の達人”と言われた彼らの周りには、ヘミングウェイ、ピカソなどの芸術家が集まりました。日常が豊かだからアートが生まれるのか、アートが日常に豊かさを与えるのか。あちこちへと思考が向かいます。
 装丁家・美術評論家の青山二郎。著作の『骨董鑑定眼』では、ピカソの陶器について、“ピカソの即興は出鱈目ではないが、焼いた方がいい性質の物を焼かずに置いて見たりしたのが出鱈目だ”と述べています。青山の周りにも中原中也、大岡昇平などの文化人が集まったそうです。
 森村さんの本は、幕別に文化の灯を集めてくださいました。 MCL編集部(そ)

三冊堂618(2023/07/27)