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15歳のときに出会った「俺」とアキの33歳までの友情の物語『夜が明ける』。貧困、虐待、過重労働、ハラスメント・・・。暗くて、哀しくて、辛くて、光は見えてこない。息をひそめて、気配を消して生きなければいけなかったアキ。アキの心が綺麗であればあるほど、理不尽な社会に憤りをおぼえる。苦しかったら、助けを求めろ-心と身体が壊れてしまう前に。
52ヘルツのクジラとは、ほかのクジラが聞き取れない高い周波数で鳴く世界で一番孤独だと言われるクジラのこと。たくさん仲間がいるはずなのに、何も届かない。届けられない。母親からの愛を受けず、苦しい人生を送ってきたキコと、母親に虐待され「ムシ」と呼ばれた少年が出会い、再生への道へと少しずつ歩き出していく物語。哀しみや後悔、そして、あきらめ・・・すべてのものを一人で抱えていくのは寂しすぎる。深い哀しみや苦しみに沈めたのは、まぎれもなく「人」であるけれど、救いの手を差し出すのも、やはり「人」。まわりをちゃんと見渡すと、『52ヘルツのクジラたち』の声をきいてくれる人が、そばにいてくれたことに心底安堵する。
目の見えないとわの主観で終始語られる物語『とわの庭』。ある日突然、とわの母親が姿を消す。ほとんど外の世界に出たことのない盲目の幼いとわを一人のこして…。子どもから大人になるまでの長い長い年月を生き抜いたとわは、大きな地震をきっかけに外の世界に出る。そこで初めて自分の置かれている状況を知ることに。それでも、母親を憎むことなく、前を向いていたとわ。とわの生命力と未来への光が救いであると感じた物語。 MCL編集部(ふ)
三冊堂545(2022/3/3)