[BookShelf Image]:2916
今月、作家・太宰治が戦時中に執筆した代表作の一つ、「お伽草紙」の直筆原稿が見つかり、現在、日本近代文学館で特別展が開催されてます。
写真家・林忠彦が撮影した有名な太宰治の写真、「太宰 治 酒場ルパンで、銀座」を見るとそうとは感じませんが、太宰の随想「九月十月十一月」では、長編小説を書くために滞在した茶店のおばさん、娘さんと打ち解けるのに三月かかったとあるように、器用ではない人だったそうです。前出の作品のほか、話の引き出しが少ない、自然に話が脱線していくなど、「話すこと」に関わる古今の書き手たちによる選りすぐりのエッセイ32篇を収録した『暮らしの文藝 話しベタですが…』。多様なジャンルの著名人の人となりが垣間見られるようです。
編集者の主人公の「私」は、太宰治の「人間失格」の名文から、太宰の創作の謎を探索。ついに、解き明かす資料に出会います。太宰の作品と太宰自身の謎を本で辿る『太宰治の辞書』は、16年ぶりに出版された人気シリーズの新作。16年の月日は、物語の時間も進めています。
「常識」「愛想」「悩み」「色気」「上品」。この5つの単語を黒く塗り潰したマイ辞書を持つ粗暴な大女、繭美に監視される星野一彦。彼の最後の願いは何者かに“あのバス”で連れていかれる前に、五人の恋人たちに別れを告げることー。太宰の未完の小説「グッド・バイ」のオマージュとして書かれた『バイバイ、ブラックバード』。一彦と繭美のやり取りは、うっかり声を出して笑ってしまいます。ラストが気になる、続編を期待する作品です。 MCL編集部(そ)
三冊堂395(2019/04/11)