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昭和から平成までの塾業界を舞台に繰り広げられる、大島家三代の家族の物語『みかづき』。フィクションだけれども、現実に起こった教育の変遷もしっかりと描いている。教育に熱い情熱を注ぎ、奮闘する大島家の面々。教育に携わる人にも、色々な立場の人がいるのだと実感する。これからも様々な形で、教育は変わり続けていくのだろう。どのような形であっても、子ども達の学びに寄り添うことのできる環境であってほしいと切に願う。
江戸時代から現代までの、様々な教育実践事例で成功してきた事実を取り上げて考察する『世界が称賛する日本の教育』。第4章で紹介されている生きる力を引き出す授業。神戸の灘校で、伝説の国語教師と言われた橋本武氏の「国語はすべての教科の基本であり、“学ぶ力の背骨”である」という言葉が、深く心に残る。国語力は、“生きる力”とも置き換えられるという。どんなに時代や環境が変わっても、この背骨さえしっかりしていれば、やっていける-。真の心のゆとりとは、こういうことかと腑に落ちる。
小説も面白いが、エッセイも面白い。戦後最年少で直木賞を受賞した著者の、「ゆとり世代」が「ゆとり世代」を見たおかしみ溢れるエッセイ集『時をかけるゆとり』。タイトルの意味は、「ゆとり世代の著者が子どもの頃から今に至るまで変わりばえせず、馬鹿馬鹿しく可笑しい日常を過ごしている、というようなニュアンス」なんだとか。本書の冒頭部分には、著者の誕生年からの年表が掲載されているが、「国内外情勢」と「そのころ朝井は…」と対比させているところも、ゆとり的?で、愉しめる。カッコよくキメないで、自分にツッコミを入れるところも著者ならでは。ゆとり的言葉のセンスに脱帽のエッセイ集。 MCL編集部(ふ)
三冊堂337 (2018/03/01)