2024年 (令和6年)
11月22日(金)
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 朝の連続テレビ小説「マッサン」。ご覧になっていますか?「マッサン」のモデルは、ニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝と妻のリタ。北海道の余市町をはじめ、道内様々なところがロケ地となっていることもあり、今後さらに盛り上がりそうですね。二人に関する本もたくさん出版されています。その中で、今回私が選んだのは『望郷』。この小説は、奥さまであるリタの物語です。冒頭では、病弱で家で過ごしがちだった少女時代、戦争で亡くしたフィアンセのことなどが、詳しく描かれています。そして、スコットランド留学中の竹鶴と出会ったリタは、周囲の反対を押し切って結婚し、日本へ―。言うまでもなく、当時の国際結婚は例のないことで、大変な苦労が待ち受けていました。竹鶴が、夢に向かって懸命な努力をする一方で、リタもまた日本の食事や、文化を理解しようと奮闘します。差別や偏見に苦しみ、辛い場面もたくさん出てきますが、苦しみながらも夫を支え続けたリタの波乱万丈な人生に、色々なことを考えさせられます。

  「望郷」の中でも登場する竹鶴政孝と一緒に日本初の国産ウイスキー製造に取り組んだ鳥井信治郎の物語『やってみなはれ』。赤玉ポートワインを世に送り出したサントリーの創始者・鳥井信治郎。「なせばなる、まア、やってみなはれ」という彼の言葉は、現状に甘んじることなく、次々と新しいことへ挑戦し続けた自身の生き方をよく表しています。失敗を恐れるより、やってみた方がよい。やってみて間違ったら、やり直せばいい―。この「やってみなはれ」精神は、後継者である佐治啓三にもしっかりと受け継がれていきます。常に前を向いて歩き続けた彼の生き方には学ぶべき多くのことがあると感じます。余談ではありますが・・・ヒット商品の赤玉ポートワインの象徴する太陽(サン)の下に、自身の姓である鳥井を置いて、「サントリー」としたという話ご存知でしたか?
 ウイスキーを知るためには、本場であるスコットランドを知らなくては―。ということで、最適な一冊をご紹介。長年ウイスキー造りに携わってきた著者の『スコットランド旅の物語』。飲酒文化は、その国の気候風土や、伝統、風習、そして、人情と密接に結びついていると著者はいいます。本書は、スコットランドという国の成り立ちを知ることができる他に、「蛍の光」の原曲であるスコットランド民謡の作詞家・ロバート・バーンズの生涯についても触れています。また、スコットランドの伝統料理も美しい写真とともに紹介されているのが魅力的。著者のウイスキー、そしてスコットランドに対する愛情が随所に伝わってくる一冊です。いつか・・・ウイスキーの蒸留所を訪れて、ポットスチルをこの目で見てみたいという思いに駆られます。 MCL編集部 (ふ)

三冊堂165号 (2014/11/13)