「らい予防法」が廃止されてから20年。
テレビでは特集番組が放送され、ハンセン病関連の書籍が出版されているなか、ハンセン病をテーマにした映画、「あん」が幕別町で上映されるのを知ったことから始まったこの企画展。
【まぶさLED】のメンバーである、1人の女性の「思い」が、他のメンバーを動かしました。
ハンセン病と診断され隔離施設に入所した作家・北条民雄の凄まじい体験が描かれている小説『いのちの初夜』。25年前に読んだその本は、当時、悲しみの淵に沈んでいた彼女を励ましてくれました。『いのちの初夜』は、彼女同様、ハンセン病に関する『逆境に耳ひらき』という本に出会ったことで、自身に起きた悲惨な出来事を救われた知人に紹介された本なのだそうです。
ハンセン病の本は、生きとし生きるものに何かを伝えてくれる、教えてくれる。
しかしながら、いまだに消えない差別と偏見は、ハンセン病についてあまり知られていないことにあるのかもしれない。
「どうして、ハンセン病にまつわる本は心を打つのだろう?」
「なぜ、差別されなければならなかったのだろう?」
「そもそも、ハンセン病って何だろう?」
知れば知るほど、溢れてくるハンセン病への「問い」。
まずは、ハンセン病を知ってもらうきっかけになればと、ハンセン病の今を知ることができるパネル、そして、ハンセン病の過去を知ることができる本の展示会を開催することにしました。
初めての企画展だけに、長い時には話し合いが5時間にも及んだことも
企画展の開催にあたり、4回の打ち合わせを重ね、 ハンセン病を知る・伝えるためには、3つの「種」が必要と考えました。
◇ハンセン病の今を知る=「パネル」
◇ハンセン病の歴史や過去、差別があった事実を伝える=「本」
◇ハンセン病に関わる人に触れて知り、外へ発信する=「人」
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パネルは、世界のハンセン病制圧に注力する日本財団が趣旨を理解してくださり、快く提供。クリアファイルやシールなどの啓発グッズも提供いただくなど、全面的な協力を受けました。
「風化させてはいけない」。
展示会場に置かれた感想ノートの、中学生のコメントが物語るように、 ハンセン病を知るきっかけとなりました。
北海道のハンセン病問題も独自にまとめた
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本の展示は、幕別町図書館で所蔵しているほか、北海道立図書館より図書を借用。 【まぶさLED】で、POP(本の紹介文)を添えました。
平中忠信さん講演会を共催した北海道新聞帯広支社の協力により、ハンセン病に関する新聞記事も掲示。北海道出身者の今を知ることができます。
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映画「あん」の上映会当日は、満員御礼。映画を見終えた人々が続々と展示会場に。みなさんの真剣な眼差しが印象的でした。
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上映会後には、原作者のドリアン助川さんが【まぶさLED】のインタビューに応えてくれました。知りたい、という私たちの問いの一つ一つに、丁寧にあたたかく言葉を返してくれます。
※インタビューレポートはこちらから(作成中)
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「北海道のハンセン病患者はどうだったのだろう?」
そのこたえの糸口になったのが、『北海道ハンセン病問題検証報告書』。 その報告書をまとめた委員の一人が、今回、講演会をしていただいた「北海道はまなすの里」代表の平中信忠さんでした。
「北海道はまなすの里」は、北海道でハンセン病回復者の支援をするボランティア団体。平中さんは、北海道におけるハンセン病の状況を語ってくださいました。
※講演会レポートはこちらから(作成中)
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わたしたち【まぶさLED】は、パネル、本、そして人という3つをつなげることでハンセン病を知る「種」を蒔きました。その種が芽吹き、広がるよう、これからも自分たちの「なぜ?」を大切にし、こういった企画展などさまざまなことを発信していきたいと思います。
そして、わたしたちは、この企画展で、本が人と人をつなげることを体感しました。たくさんの方が関わり、協力してくださったからこそ得られたものだと実感しています。
企画展に関わってくださった方々に心より感謝いたします。
まぶさLED企画展「知ってる?ハンセン病のこと」
主催:まぶさLED(まくべつBOOKサポーター/図書館エディター)
共催:幕別町図書館/北海道新聞社帯広支社/北海道はまなすの里
協力:日本財団/図書館と地域をむすぶ協議会/北海道/北海道立図書館