2020年 (令和2年)
10月31日(土)
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 暑かった8月も終わり、暦の上でももう秋です。今回は、歴代直木賞作家による「読書の秋」と「食欲の秋」を一度に楽しめるエッセイ集三冊を紹介します。

 まずは、「少年と犬」で今年の第163回直木賞を受賞した馳星周さんの『喰人魂』です。馳さんは、大のサッカー好きでも知られ、本場のサッカーを生で楽しむために頻繁にヨーロッパに出かけますが、イングランドとドイツは「美味しいものが無いから」と敬遠気味です。逆に、イタリアのサッカーは守備的で好きではないのですが、「飯が旨いから」と何度も足を運ぶほど食に対するこだわりが強い方です。(サッカーも料理も美味しく至福なのはスペインだそう。)高級グルメから、道産子ならではのジンギスカンのタレまで、さまざまなエピソードから馳さんのエネルギッシュな人柄が伝わってきます。

 次にご紹介するのは、2001年、「あかね空」で第126回直木賞を受賞した山本一力さんの『味憶めぐり』です。東京の名店・老舗の料理や、幼少期に食べた思い出の味などが紹介されています。山本さんのエピソードは、食味だけでなく、そこにまつわる人間模様も味わい深く描写されていて、時代小説の名手ならではの読み応えのある一冊です。

 最後は、「切羽へ」で2008年の第139回直木賞を受賞した井上荒野さんの『荒野の胃袋』です。井上さんも「食べることへの情熱が自分でも呆れるくらい強い」と自身で書かれていますが、上記の2作品とは少し趣が違っていて、一つのエピソードがとても短く、可愛いイラストもちりばめられています。内容も、食材や調理法、味そのものに関する記述よりも、調理したり食べたりしている時間と空間、特に「家族の食卓」を大切にされていることが伝わってきて、読後に温かい気持ちになることができます。 MCL編集部(な)

三冊堂468(2020/09/03)

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