2024年 (令和6年)
4月19日(金)
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 北海道にはユニークな出版社が多くあります。中西出版の『ほっかいどう百年物語』は、北海道にゆかりのある人物にスポットを当て、その偉人の生涯をドラマ仕立てにし紹介するラジオ番組、「ほっかいどう百年物語」を書籍化したものです。これまでに第10集までが刊行され、第9集では、幕別町発祥のスポーツ、「パークゴルフ」の考案者の前原懿さんが登場。スポーツとして確立し愛好者を増やすところから、幕別町の老舗の木材メーカー・新田ベニア(現ニッタクス)が試行錯誤を重ね3年をかけてクラブを作ったこと。国際大会開催にまで大きく発展した様子などが描かれています。その他、地域医療に身を捧げた医師など、身近な偉人が取りあげられています。

 終戦直後に留萌沖で引き揚げ船が撃沈された「留萌沖三船殉難事件」を取り上げた柏艪舎の『海わたる聲』は、元STVのプロデューサーである著者が、番組だけでは描ききれなかった部分を文章にしたためた一冊。生存者の方々や遺族に丁寧な聞き取りを行い編んだそうです。終戦を迎え、命をつなごうとした人々に起こった悲劇。疎開の混乱時で乗船者名簿等はなく、いまなお新たに分かる乗客の方がいるそうです。悲しみは未だに続いています。
 北海道新聞社の『さわこのじてん』は、重い障害のある「さわこ」さんと、どうにかして言葉を交わしたいと願った母の「美幸」さんが、成長に合わせて改良を重ね作った世界に1つの「じてん」を紹介したもの。丁寧なイラストと数々の語彙。可愛らしい表紙に微笑ましくなるのも束の間、読み進めると涙せずにはいられません。どうしてこんなにも強く生きられるのか。自分はどうしたら強くなれるのか。さわこさんとお母さんが教えてくれます。 MCL編集部(そ)

三冊堂417(2019/09/04)