2024年 (令和6年)
4月19日(金)
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午前10:00から
午後 6:00まで

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 CGでのバーチャルキャラクターと、子ども向けとは思えないセンスあるコーナーで人気を博した「ウゴウゴルーガ」。その第2期のオープニング曲だったピチカート・ファイブの「東京は夜の七時」は、キャッチ―かつおしゃれ感が満載で、異世界の空間に飛び込んでしまった気分になったのを覚えています。その曲を手がけた小西康陽の『僕は散歩と雑学が好きだった。』は、レコード、音楽、映画から旅行、日々のことなどを綴ったヴァラエティブック。なかでも、「小西康陽が小西康陽になるために読んだ100冊の本」というコーナーでは、寺山修司、和田誠、池波正太郎や高橋睦郎など、幅広いジャンルの本が紹介されています。ピチカート・ファイブは、鈴木梅花の「仮縫い」という小説から見出された美しさを目指していたのだとか。小説が音楽活動のコンセプトになるだなんて、何とも素敵なアーティストです。


 「僕は散歩と雑学が好きだった。」というタイトルは、同じくおしゃれな伝説的なコレクター、植草甚一を思い出します。散歩に出て何か買って帰らないと、その晩は元気がなくなってしまうという植草の著作・『植草甚一の収集誌』では、カメラ、レコード、指輪や郵便切手など、さまざまな彼にとっての宝物を集めるに至ったエピソードが。わが道はすべて古本屋に通ず、と述べているように、古本の収集家でもあった植草の、アメリカ、オーストラリアなど日本を飛び出した古本屋巡りの話に、新刊本にはない古本の良さを知ります。
 交わることがなかったであろう二人に共通している音楽は、JAZZ。イラストレーター・和田誠の絵に、作家・村上春樹が文章を添えた『ポートレイト・イン・ジャズ2』では、26人の世界を代表するジャズミュージシャンについて語られています。シンガーのジミー・ラッシングはこってり系の「カンザスおやじ・ど演歌パワー」があり、ドラマーのシェリー・マンはお店でたとえて言うなら、美味しい小皿のおつまみを次々と出してくる飲み屋のような能弁さがあるのだとか。村上春樹のそこから音楽が流れてくるかのような言葉の数々に、頭の中のオーディオ装置がオンになるような感覚を覚えます。雰囲気がある人の背景には、本が潜んでいるのですね。 MCL編集部 (そ)

三冊堂164号 (2014/11/6)