2024年 (令和6年)
4月24日(水)
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 ソフィーの大切な植物の図鑑がこわれてしまいます。壊れた本はどこへ持っていけばいいんだろう?と、途方に暮れるソフィーに、町の人たちは『ルリユールおじさん』のところへ持って行けばいいと教えてくれます。「ルリユール」とは、製本職人のこと。ソフィーの大切な図鑑がルリユールおじさんの木のこぶのような手によって、修復されていく工程が、見事なまでに丁寧に美しく描かれています。パリでも、60ものある工程をすべて手仕事でできる職人は、数えるほどになってしまったそう。修復された図鑑は、最後に金箔のタイトルが施され、ため息がでそうなほどに美しく生まれ変わりました。ソフィーのように、大好きな書物を大切にする心と、ルリユールの魔法の手が、書物に息を吹き返らせたのです。

 古都奈良の文化財の一部として、世界遺産にも登録された唐招提寺。この物語の「すみ鬼」は、この唐招提寺の金堂の四隅にいる木彫りの邪鬼がモデルになっています。『すみ鬼にげた』長い間、人目に触れることのなかったすみ鬼ですが、平成の大改修によって、世に知られるところとなりました。軒下に正座をして屋根を支えるすみ鬼。何故か、一体の鬼だけが違う表情をしているのだとか。三体の必死な形相のすみ鬼に対して、一体だけは力の抜けたような表情をしているのだそう。作者は、このたくさんの謎に包まれたすみ鬼に惹きつけられたと言います。1200年以上もの長い間、金堂を守り続けてきたすみ鬼ですから、こんな物語が本当にあったかもと創造を膨らませてしまいます。
 子どもは、泥あそびが大好き。土に水をまぜて、ドロドロぐちゃぐちゃ。本当にあきることなくいつまでも無我夢中で遊びます。キレイに型抜きをして、仕上げにタンポポで飾りつけをしたケーキを、娘がお世話になっていた保育園の子どもがプレゼントしてくれたことがあります。プクプクとしたかわいい手で作ったケーキ。「食べて」と言われるのですが、食べてしまうのがもったいないくらいキレイに出来ていました。日常の中で、こんな素敵な場面に遭遇すると、本当にうれしくなります。『光る泥だんご』を見せてくれた子どもの表情も忘れることができません。泥だんごに負けず劣らずピッカピカに輝いていました。 MCL編集部 (ふ)

三冊堂145号 (2014/06/26)